タイトルは未定

メンタルヘルス・マネジメント検定の備忘メモ(現在一部改修中)

QWL(Quality of Work Life)

QWL に関して。

 

QWLとは

QWL(Quality of Work Life)とは、簡単には企業において働く人の労働や生活の質を表します。QOL(Quality of Life)はよく聞く用語かと思いますが、QOL は心身の健康、安全、人間関係や社会性、表現の自由など、様々な要素をひっくるめた生活や生命の質を表し、医療の現場でよく使われます。一方、QWL は企業で働く労働者に特化した考えです。

なお、QWLには雇用条件や安全衛生、傷病保障や労働者の満足度など、労働に関わるあらゆる条件を含む広義のQWLと、作業用式や作業内容など、より具体的な労働環境の改善を目指した狭義のQWLとがありますが、今回のテーマは後者にあたります。

 

QWLが注目されたきっかけ

QWLは、1960年代ごろから関心が寄せられるようになりました。

1960年代というと、第2次世界大戦が終わり、日本でいうと高度経済成長期にあたる時期です。ヨーロッパやアメリカでも大戦後の経済復興・成長が進み、大量生産による物質的豊かさを目指す流れがありました。

大量生産の製造現場でよく見られたベルトコンベア方式に代表されるような、単純で単調な繰り返し作業は、労働者の働くことに対する意欲の減退や不満がしばしば見られるようになりました。(具体的には、高い欠勤率、退職率、ミス、サボりなど)

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ILO(International Labor Organization、国際労働機関)では、1972年、賃金が高い労働者でも職務に対する不満が高い傾向があることに注目し、1974〜1979年の長期計画においてQWLの視点を取り込んでいます。

このように国際機関の提言がリードし、国も支援する形で、ヨーロッパやアメリカにて企業が主体的にQWLに取り組む流れができました。これに労働組合が加わり、さらに取り組みが広まっていきました。*1

具体的には、ベルトコンベアの撤廃や削減、チーム制やリーダー制の導入、裁量権の付与、などです。機械的な作業をやめ、「労働力の人間化」が叫ばれたのでした。

 

ソシオテクニカル・システム

また、これに関連し、ソシオテクニカル・システムという考えも出てきました。

これは、技術と社会的側面との融合が大切だという考えで、例えば「ベルトコンベアを使い、高度に細分化・簡略化された単一作業を黙々と行う」ことが技術上、理論上最も効率的であるとされていたとしても、人が関与(労働)している以上、そこには組織的・社会的要素を取り入れること(例えば作業員同士の連携、裁量や責任を持たせるなど)が結局は効果的であるという考えです。技術的システムと社会的システムは切っても切り離せるものではなく、両者良い塩梅で融合させたしくみづくりが重要ということです。

この考え方に基づいたQWL施策、具体的には以下。

ソシオテクニカル・システムの考え方に基づくQWL向上策例

  • 安全な作業環境の構築
  • 能力の向上につながる職務の割り当て
  • 個人の成長を保障する職の安全
  • 公平な評価と報酬
  • 昇進の機会の提供
  • 個人のプライバシーや権利の保護
  • 個人の私生活を脅かさない仕事の要求
  • 企業の社会的責任の追求

メンタルヘルス・マネジメント検定 公式テキスト 第4版』大阪商工会議所

たしかに、「効率化」を目指して新たに社内システムを導入したのにも関わらず、うまく使えていない社員が多い(そして新システムの不満を言い以前のやり方を続ける)ケースなどは、「効率化」ばかりではない指標、つまり社会的側面(使う人や使う部署のことなど)を考慮する必要があったとになるでしょうか。とはいえ、全員への配慮というのは現実的には難しいですし、使用者側のみを考えることもまた違うことではありますが。(例えが違うかもしれません・・)