タイトルは未定

メンタルヘルス・マネジメント検定の備忘メモ(現在一部改修中)

仕事のやる気を起こすには②(職務特性)

職務特性研究について。

 

職務特性研究とは

職務特性研究(Job Characteristic Theory, JCT)は、どんな職種やどんな業界の仕事であっても仕事に対するモチベーションや満足度などを左右するファクターは共通している、という考えのもと、それが何かを研究したものです。

ざっくりいうと「仕事のやる気や満足度を上げるファクターは仕事に隠れている、それは何か?」という感じです。

 

5つのファクターと5つのアウトカム

具体的には、以下5つのアウトカムに相関するとのことです。

職務特性が影響を与える5つのアウトカム

  • モチベーション
  • 満足度
  • パフォーマンス
  • アブセンティズム(absenteeism)※1
  • ターンオーバー (turnover)※2

 ※1 欠勤やサボりなどの習慣化され、予定されていない勤務時間中の不在。

 ※2 離職率

モチベーションや満足度などといった主観的なものに限らず、パフォーマンス、アブセンティズムやターンオーバーなどの仕事や組織の運行状況を表す具体的な数字としても現れてくるようです。この研究が盛んになされた所以です。(事業主としても死活問題)

こういったものに、仕事のどういった特徴が影響を与えるのかというと、以下の5つのファクターが示されています。

仕事のモチベーションなどを左右する5つのファクター

  1. スキル多様性(Skill Variety)
  2. タスク一体性(Task Identity)
  3. タスク重要性(Task Significance)
  4. 自律性(Autonomy)
  5. フィードバック(Feedback)

細かくは後ほど見ていきますが、これら5つのファクター(特徴)が労働者に心理的影響を与え、そのアウトカムとして先程の5つの指標(モチベーションやパフォーマンス、離職率など)が出ると考えられています。つまり、労働者の望ましいともいえる心理状態を作ることがキーとなるわけです。また、このことからも、労働者自身のステータスや指向、能力なども関係してくることがわかります。

f:id:OmanJman:20210928151224p:plain

職務特性モデル(Job Characteristic Theory, JCT)のイメージ
大阪商工会議所メンタルヘルス・マネジメント検定試験Ⅰ種 公式テキスト 第4版』より筆者作成

この理論の元となったのがHackman & Oldhamのモデルです。

彼らは1975年にJCTの骨子となる説を発表、仕事のうち、あるファクターがモチベーションや満足度などに影響を及ぼすとしました。のち1980年にもより形となった説を出し、これをもとに様々な研究や説が発表されました。

 

以下、仕事の数あるファクターのうち、どういったものが大事なのか見ていきます。*1

1.スキル多様性(Skill Variety)

どらくらいバリエーションのある活動があるか、またそれが、働く人にどれくらい多様なスキルや能力の成長を必要とするかの度合いです。仕事が細分化・ルーチン化されている場合はこの度数は低くなりますが、いくつかの異なるスキルや能力を要求するような仕事はより意義深いものになります。

 

2.タスク一体性(Task Identity)

仕事のピースを識別し、見える結果に仕上げることを求める度合い。仕事の工程全てに関わる方が、一部のみに責任を持つよりもより有意義になります。

 

3.タスク重要性(Task Significance)

他の人々の生活にどれくらい影響を与える仕事かの度合いです。組織内に直接影響するものや、外部環境に影響するもの、どちらでもありえます。精神的にも身体的にも、人々のwell-beingに実質的に影響を与える仕事の方が、誰かに限られた影響を与えるよりも、より意義を見出しやすい傾向があります。

 

4.自律性(Autonomy)

仕事を進める上で、働く人自身でプランし決定するために重要な自由、独立性、裁量がある度合いです。高い自律性の仕事では、上司の指導やマニュアルより、働く人自身の努力やイニシエイティブ、決断力によって仕事のアウトカムが左右されます。このようなケースでは、自己の成功や失敗により重大な個人責任を経験します。 

 

5.フィードバック(Feedback)

どれくらい仕事の結果を知っているかの度合いです。仕事のパフォーマンスについての明確で具体的、細かく実行可能な情報です。仕事のパフォーマンスについて、クリアで実行可能なフィードバックをもらった場合、仕事の取組の結果についてのより全体的な知識を持て、生産性を向上させるためには具体的にはどういったことが必要なのかがわかります。

 

MPS

このモデルによると、仕事の5つのファクターが良い方向に作用した場合、ポジティブなアウトカムが出ます。例えば、高いモチベーションや満足度、ハイパフォーマンス、低いアブセンティズムなど。

これを数式化したものがMPSです。

MPSは、Motivation Potentional Scoreで、以下の式で成り立ちます。

f:id:OmanJman:20210927131632p:plain

MPS(Motivation Potential Score)

 

テキストはこちら(同じ内容)

Motivation Potentional Score

MPS =(スキル多様性+タスク一体性+タスク重要性)/ 3 × 自律性 × フィードバック


面白い点は、5つのファクター全てが等しく影響力があるということではないということです。

自律性、フィードバックが比較的影響が大きく、スキル多様性、タスク一体性、タスク重要性はこれら3つの平均値の影響力になります。つまり、後者3つはおよそ3分の1の影響力ということになります。(なお、先程のJCTのイメージ図でもその影響力の大きさを反映したものになっています)

裁量があることと、フィードバックがあること、これらは確かに、仕事をより「自分ごと化」できる要素であるかもしれません。

 

ただ、社員のモチベーションを上げたいからといって、自律性やスキル多様性、タスク一体性についてはすぐにできることではないかもしれません。それは組織や決裁、人事やシステムなど、大幅な変更を必要とすることもあるからです。会社によっては難しいこともあるでしょう。

ただ、フィードバックやタスク重要性については上司などの働きかけ方で変わることも多いかもしれません。労働者自身でも、できる限り情報を集め、自身が関わった仕事の結果がどうなっているか、もしくは依頼者にフィードバックをもらうようにするなどできることがありそうです。

 

また、これは勉強や家事、育児、介護などにも共通している部分があるように思います。これら5つのポイントを可能な限り意識して取り組む(もしくは取り組んでいる人に接する)ことが、関わる人みんなによりベターな方向性を示す気がします。(簡単にいうと、家族はほめる、お礼を言う。本人は自分でプランする、記録する、など)

 

 

 

関連記事

omanjman.hatenablog.com