ストレスチェック②(仕事のストレス判定図の考え方、読み方)
ストレスチェックで使用される、「仕事のストレス判定図」の考え方です。
※以下、「仕事のストレス判定図」(東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野 川上憲人)を参考にしています。 *1
仕事のストレス判定図とは
「仕事のストレス判定図」とは、ストレスチェックの結果を可視的にわかりやすく表した図で、仕事のストレスの各要因がどれくらいあるのかを一眼で把握することができます。
仕事のストレス要因はいくつかありますが、ストレスチェックではそのうち4つを見ています。
- 仕事の量
- 仕事のコントロール度
- 上司の支援
- 同僚の支援
これら4つは仕事の上でストレス要因となりやすく、またその影響も大きいものです。ストレスチェックの57個の質問に答えることで、これら4つのストレス要因がどれくらいのものかを定量的にチェックすることができます。
そして、ストレスチェックでは、上記4つのストレス要因を2つずつ組み合わせて図を作成します。
- 仕事量 × コントロール
- 上司の支援 × 同僚の支援
以下、各々についてみていきます。
仕事の量 × コントロール
1つ目の図は、「仕事の量的負担」と、「仕事のコントロール度」です。
仕事の量やスピードと、その仕事をどれくらい自身の裁量の元できるか(自由度、コントロール度)の関係をみています。
上記の図を見ると、仕事の量がかなり多かったとしても、仕事のコントロール度が高い場合は「中ストレス」となっています。その逆に、仕事の量がさほど多くなくとも仕事のコントロール度がかなり低い場合は「高ストレス」状態となってしまうことがわかります。
例えば、製造業の現場ー工場のライン作業などは、仕事の裁量権や自由度はかなり低い(高度に固定された仕事)ですので、仕事量は少なかったとしても高ストレスになりやすいのです。また、仕事の量は多いものの、自身にほとんど全ての裁量権や自由度がある場合は同じ仕事量の人と比べてもストレスは低く抑えられることがわかります。
ここで、単純にストレス度と生産性(効率といっても良いかもしれません)が反比例だと考えると、いくら忙しい仕事でも、一定以上の自由度や裁量権が与えられていれば、仕事の生産性は上がりやすいと考えられています。
上司の支援 × 同僚の支援
職場で得られる支援(サポート)もストレスに影響し、それは上司と同僚に分けられます。
これはシンプルです。上司と同僚両方ともサポートを得られる場合は低ストレス。両方サポートなしが高ストレス。どちらか一方のサポートなら中ストレス。
支援(サポート)とは、具体的には、困った時に相談に乗ってくれる、アドバイスをくれる、上司なら職場(部署など)をうまく管理している、などです。
仕事のストレス判定図の考え方、見方
上述の2つのストレス要因×2セット(仕事の量×コントロール、上司の支援×同僚の支援)をはかり、そのどこに自分(の職場)が位置するのかプロットしたものが仕事のストレス判定図です。
以下は仕事のストレス判定図です。*2
これらの図には、全国2.5万人の労働者を対象とした調査により得られたデータがプロットされています。(◇とか◯とか△とか)
図中、右から左へ下がる斜めの線は、全平均を100とした場合の標準ラインです。横軸、縦軸はストレスチェックのスコア。
ですから、例えば男性・全平均は、「仕事のコントロール」約8点、「仕事の量的負担」約8.5点ということがわかります。(つまり◇のところ。)ここを100として、自身(の職場)のスコアがどこに来るかにより、「健康リスク」が全平均と比べて相対的にどれくらいかを見ることができます。
「健康リスク」とは、心理的ストレス反応(憂うつ、不安など)、疾病休業、医師受診率といった健康問題の発生確率です。
例えば、120の職場は、健康リスクが全国のそれと比べ、1.2倍ということです。心理的ストレス反応が1.2倍みられ、疾病休業も1.2倍起きやすい、などといったことです。
逆に、80の場合はそれらの問題が0.8倍(80%)になると考えられます。
※もちろん、これらはあくまでもストレスチェックの回答から得られたストレス要因スコアから「予想される」健康リスクです。
総合的な職場の健康リスク
①仕事量 × コントロール、②上司の支援 × 同僚の支援、それぞれから得られる健康リスクの総合した健康リスクは、以下の式で求められます。
① × ② ÷ 100
例えば、①仕事量ーコントロールが120、②上司の支援ー同僚の支援が90の職場では、
①120 × ②90 ÷ 100 = 108
総合した職場の健康リスクは「108」です。
これ、2つの値を足して2で割るのではないのですね。両方のリスクの掛け算(して100で割る)が総合リスクになるということです。たとえ一部であっても、あるストレス要因が高い場合は総合的にも職場の健康リスクを高める方向に働きやすいことがわかります。
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