安全配慮義務③
安全配慮義務について。(その 3 )
違反した場合、刑事罰?損害賠償?
企業が労働安全衛生法(公法的規制)に違反した場合、刑事罰の対象となります。ただ、そもそも労働安全衛生法は「最低限の基準」を定めているという性質上、その範囲は一定のものに限られる場合があります。
ただ、それで企業の責任追求が終わるということではなく、それ以外の部分は民法の契約責任(私法的規制)が問われる可能性があります。
つまり、従業員の健康管理問題は、公法的 and/or 私法的の責任が絡んでくる可能性があります。
請負会社社員や派遣社員は対象外?
安全配慮義務は「労働者」「従業員」が対象のため、請負社員や派遣社員は関係ないもの、と思われそうですが、安全配慮義務の範囲は労働契約を結んだ使用者ー労働者間のみならず、請負会社社員、派遣社員なども対象となる場合があります。
1975年判例では、「ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間における義務」としています。つまり、実際の関係性により都度判断されます。(業務上の指揮命令が直接あったか、など)
例えば、直接的契約関係は 派遣社員ー派遣元会社 ですが、実際に働く場所は派遣先会社で、派遣先会社の社員の指示に従って働いている場合、派遣先の会社にも安全配慮義務は発生すると考えるのが妥当でしょう。
責任はいつまで続く?
安全配慮義務は契約責任というかたちで問われ(契約の不履行)、契約責任の場合の損害賠償請求権の消滅時効期間は10年でした。
ただ、2020年4月〜民法が改正され、消滅時効ルールは以下となりました。
消滅時効ルール
「権利を行使することができることを知った時から5年間」もしくは
「権利を行使することができる時から10年間」いずれか早い時点。
さらに、後者について「人の生命又は身体の侵害による」場合は「20年間」
(民法166条、167条)
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