安全配慮義務①
労安法、安全配慮義務に関して。(その 1 )
「安全配慮義務」はどこに書いてあるの?
「安全配慮義務」の概念は、労働契約法5条に明文化、規定されています。労働安全衛生法ではありません。
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」
労働契約法5条
ただ、この労働契約法は2008年に制定されたもの。それ以前は法律に明文化されたものはなく、裁判の事例を元に判断されていました。(「判例法理」として認められてきた)
その裁判事例は、1975年、最高裁にて国の公務員に対する義務として安全配慮義務を初めて認めたものに端を発します。
その後、1984年には、企業にも義務があるとされました。
「信義則上の不随義務として、使用x者は、労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは機器等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っている」
川義事件、1984年4月10日
これらが判例法理として認められてきたのでした。
また、それ以前については、不法行為責任というかたちで問われていました。
労働安全衛生法上の「義務」は守らないとどうなる?
労働安全衛生法は従業員の安全・衛生問題に関する公法的規制としての法律です。
以前は労働基準法で労働者の健康や安全に関する規定を定めていましたが、当時高度経済成長に入った日本では、社会や技術が大きく変わり、労働安全衛生の問題が多発・複雑化(年間6,000人の労災で死者が出ていたそう)。1972年に労働安全衛生法が制定されました。*1
労働安全衛生法では、労働基準監督署などの行政機関の監督を定め、違反した場合には刑事罰の対象となります。
つまり、労働安全衛生法上の義務は、「行政的監督及び刑事罰という行政上の規定によってその履行が担保されている」といえます。
安全衛生管理上の義務に違反した場合、何を追及される?
企業が安全衛生管理上の義務に違反して従業員に損害を与えた場合、(民法の)不法行為責任や契約責任に基づき、企業の損害賠償責任が追及されます。
労働者の健康管理義務は公法的規制(労働安全衛生法)ではなく、私法的規制の対象です。
労働安全衛生法の根拠は?
労働安全衛生法は、「労働基準法」の定めを受け「職場における労働者の安全と健康を確保する」ことなどを目的として制定されたものです。
前述の通り、労働基準法で定めていた労働者の安全・衛生に関わる部分を独立・充実させたものが、労働安全衛生法です。
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